2011年5月3日火曜日

もうひとつの震災ものがたり④



「祈りで人は救えるのか…」宗教者も悩み、苦しむ毎日
           
東日本大震災での
犠牲者の追悼や被災者の支援に、
多くの僧侶らも奔走している。        
「宗教者の果たすべき役割とは何か」
「祈りで人は救えるのか」。 
     
死者行方不明者
2万6千人超という現実に、
宗教者も悩み、苦しむ毎日が続く。          
28日は「四十九日」。
寺には
葬儀の読経を求める人たちが
いまも訪れている。

「震災後、
数え切れないほどの死者を弔いました」。   
細川雅美住職(53)の言葉には
疲労がにじんでいた。  

「これでも片づいた方です。
皆さんの力を借りながら、前に進んでいます」  

宮城県石巻市の称法寺。
津波で
境内のすべてが破壊された。
葬儀離れ現象があるとはいえ、
多くの人にとって葬儀は
故人との別れの大切な儀式だ。
      
称法寺には、
供養を求めて遺骨を抱えて
訪ねる人たちの姿が今も見られる。
  
「門徒(檀家=だんか)は、
付き合いのある
この寺での供養でないと納得しません。       
そんな思いに丁寧に応じたい。 
   
今は、
体が5つあっても足りないくらい」         
3月11日、
細川住職は仙台市にいた。        
2日後、
やっとたどり着いた
寺の姿は変わり果てていた。
 
津波は本堂1階の天井まで達した。
重い釣り鐘すら、
台座だけを残して流されていた。 
      
寺で留守番していた僧侶は
遺体となって見つかった。  
340年もの歴史を刻んできた寺は
苦難に直面している。 

「早く、地域や門徒の生活を
まともな状態にしたい。   
『本堂も建て直すでしょ』と聞かれた。
もちろん、そのつもりです」  
   
寺には、
仙台を拠点にした僧侶のボランティアが
駆け付けてくれた。     
がれきを取り除いたり、
生活物資を運んだりしてくれた。 
ボランティアの僧侶らは、
寺の支援だけでなく、
地域の支援にも繰り出している。 
「ボランティアも私も、やるべきことが山積です」
           
■ 「一人の人間として、
魂が激しく揺さぶられた」。  
宮城県内陸の栗原市にある通大寺、
金田諦応(たいおう)住職(55)は、
津波が直撃した沿岸部などから
次々と運び込まれてくる遺体に
愕然(がくぜん)とした。 

「目の前に迫った生と死の現実。
宗教者として
自分がこれまで考えてきた世界を
はるかに超えていた」 
「はっと気付いたんです。
おれは坊さんだ。
今、
自分にできることは読経なんだ、と」 
栗原市内の火葬場で、
有志の僧侶とともにボランティアで読経を始めた。

200人以上を弔ったという。
呆然(ぼうぜん)と立ちすくみ
涙するしかない
遺族一人一人の
姿が脳裏から離れない。
いままで、
見たことのない
悲嘆の姿だったという。 

「儀式ではあるけれども、
お経を唱えさせてもらうことで
少しでも慰めになれば」と考えている。
 
「日常だと思っていた平穏な日々が
実は非日常だった。
いま被災地では、
日常が苦しみとなった世界に、
皆がいる」 
宗教者として何ができるのか−。
答えはまだ見えていないという。

「やがては心のケアなどを
すべきでしょう。
でも今は、
多くの人が現実と向き合うことも
できていない段階ですから」 

四十九日に合わせて、
金田住職は近く、1
5人ほどの有志と沿岸部を訪れ、
鎮魂の行脚をする予定だ。 
「僧は『姿』で示すしかない。
いまは祈りをささげることで、
被災者に寄り添えれば」

 祖父の遺志継ぎ供養 津波被災地の僧侶 
「生涯をかけて亡くなった方々を供養したい」。    
大規模な津波被害が出た
岩手県田野畑村の法王山宝福寺の僧侶、
岩見具行さん(27)は
亡くなった村民のために連日、
遺体安置所や
火葬場で読経を続けている。 
宝福寺は
昭和8年の津波で死亡した
村民の供養のために祖父が建てた。
岩見さんは
「亡くなった方の役に立ちたい」
と被災者の供養と遺族の
心の救済に当たっている。
祖父は生涯、
津波の被災者の供養を続けた。
父も遺志を継いだ。 
岩見さんは
東京でサラリーマン生活を送っていたが、
父の死去で仏門に入り
平成21年秋に宝福寺に。
今回の津波で多くの被害者が出たが、
当初は自分が何をすべきか分からなかった。 
人に相談し
「できることをやろう」と決意。
連日、
遺体の火葬前に読経し、
被災者には「一緒に頑張りましょう」
と励ましている。
(産経新聞)

 ここに登場したお坊さんたちは、
被災者でありながら、
自らの立場に翻弄されながらも、
目の前の現実に立ち向かっておられる。
この惨憺たる状況の中において、
もしかしたら
初めて自らの本来の使命に
目覚められたのかも知れない。
合掌

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